助産師とは?
みなさんは助産師について、どんなイメージをお持ちでしょうか?
言葉からすると、「お産」とか「助ける」なので、女性がお産をする時にお手伝いをする人。
昔で言う産婆(さんば)さんとかをイメージする人が多いかも知れませんね。
それも正解ですが、出産時のサポートはお仕事の中の一部にすぎません。
助産師はもっともっといろいろなお仕事をしているんです。
ここでは、私たち助産師についてもっと知っていただきたくて、分かりやすくお話ししますね。
助産師ってどんな人?
助産師とはなんぞや?と聞かれたら、次の引用文になっちゃいますね。
「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいいます。
助産師は、助産師国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受けなくてはなりません。
「公益社団法人日本助産師会 助産師とは 法律と定義」から引用
これは、保健師助産師看護師法という法律の第三条に定められている助産師の定義です。
この法律は、助産師等の身分を定めた法律で、通称・保助看法(ほじょかんぽう)といいます。
うっ、堅苦しいですね汗。かみ砕いて説明しますね!
まず、用語を説明します。
- 「助産」は、赤ちゃんが生まれることをお手伝いすること
- 「妊婦」は、お腹の中に赤ちゃんがいる女性
- 「じょく婦」は、お産が終わった女性※
- 「新生児」は、産まれてきた赤ちゃん
- 「保健指導」は、健康に関する指導(ケア)のこと
※じょく婦は、褥婦とも書きます。
正確には、赤ちゃんを産んで間もなく、産褥(さんじょく)にある女性のこと。
産褥とは、一般に産後6週間から8週間までの期間をいいます。
助産師は、厚生労働大臣から免許を受けて、お産のときにお母さんのお腹から赤ちゃんを取り上げます。
また妊婦・出産前後の女性と赤ちゃんに対して、困ったことがあったときに助けたり、健康に過ごせるように指導してあげる専門家なのです。
初めて子供を身ごもったとき、いざ赤ちゃんを産むときって、誰だって不安ですよね?
突然に体調が悪くなったり、陣痛があったり・・・
それに、出産してからも大変なのです。
出産後は十分身体を休めなくてはいけないのに、無理してしまうこともよくあることです。
旦那さんが仕事で忙しいから、誰も手伝ってくれる人がいないとかで、私が頑張らないと!と無理してしまうんですね。
また赤ちゃんがおっぱいを飲んでくれない、赤ちゃんが泣き止まない、急に具合が悪くなったなどの理由でとまどってしまうこともあるでしょう。
こうしたストレスから、産後うつ病になることだってあります。
そんな女性と赤ちゃんを守るために、私たち助産師がいるのです。
私たち助産師は、妊娠・出産・産後の女性や赤ちゃんに対して、健康に関する相談を受け教育指導を行う専門家なのです。
お母さんが子育てに悩んだときは、相談に乗ってあげて、悩み解決に導くアドバイスをすることから、助産師は子育ての専門家でもあるのです。
一人で悩んではいけません。
困ったことがあったなら、ぜひ私たち助産師を頼ってくださいね!
20代~60代と助産師の年齢はさまざまですが、みなさん穏やかで優しい人ばかりですよ。
助産師のお仕事とは
妊婦さん・出産前後の女性とその赤ちゃんをお世話して、健康指導や助産・子育てに関する指導を行うのが助産師の主な仕事です。
具体的には、妊娠時の健康指導、出産が始まるまでの妊婦のフォロー。
出産時の介助と赤ちゃんの取り上げなど。
出産直後の赤ちゃんの栄養指導、赤ちゃんのケア。
じょく婦へのメンタルフォローと健康指導、沐浴(もくよく)指導、授乳指導など。
親御さんの育児相談と指導。
※ただし、妊産婦さんらについてお世話できるのは、助産師の職権で対応できる健康に異常がない方に限られます。
助産師の職権から外れるときは、お医者さんに診てもらう必要があるのです。
その際は、提携関係にある医師をご紹介しますね。
上記が主な仕事内容ですが、実際の助産師の仕事はこればかりではありません。
助産師は専門家としての活動を通して、女性の生涯にわたる健康と家族問題にも関わります。
全ての世代の方に、親子の絆のつくり方や、各家庭に見合った家族計画の立て方などをお教えするのも助産師の仕事のひとつです。
例えば、妊娠前の女性に産前教育や産後の家族計画の指導したり、
既婚女性から避妊や家族計画の相談を受けたり・・・
若者に性に関する正しい知識をお伝えする教育活動もあります。
思春期の女性から性や生理に関する相談を受けたり、若い世代に避妊知識や最近増えている性感染症の予防知識を教えたりもします。
また、妊娠前の不妊治療を受けているご家族のケアや、不妊治療を行っている夫婦のご相談に乗りアドバイスさせていただくこともあります。
閉経後のホルモンバランスの変化による体調不良など、更年期女性の困りごとに対するご指導もさせていただいています。
このように、助産師は、妊娠してから出産後落ち着くまでの女性・赤ちゃんに対する保健指導をするだけではなく、 全ての世代の女性のライフサイクルに寄り添い健康を改善しつつ幸福に導くお仕事をしているのです。
まとめると、下記が仕事の内容になります。
助産師のお仕事まとめ
妊婦のケア | 栄養指導、メンタルフォロー |
---|---|
出産時のケア | 介助、新生児の取り上げ |
産後の女性と新生児のケア | じょく婦の体調管理、栄養指導、母乳指導、沐浴指導、骨盤ケア、新生児のケア、ベビーマッサージ、メンタルフォロー |
保護者の指導 | 育児相談 |
妊娠前の女性の指導 | 産前教育の普及、家族計画の指導 |
思春期女性の指導 | 避妊、性感染症の予防など性に関する知識の普及と指導 |
更年期女性の支援 | 更年期症状に対するアドバイスと指導 |
夫婦の支援 | 家族計画、夫婦関係、不妊治療相談 |
助産師にはどこで会えるの?
助産師は、女性の生活に密着したお仕事なので、皆さんの身近な所で働いていますよ。
助産師が最も多く働いている職場は、病院・診療所の産婦人科です。
病院などの助産師さんは、医師の指示のもと妊娠から出産・産後ケアなどの業務を行っています。
助産師がいない産婦人科もありますが、大きめの病院の産婦人科に行けば助産師に会えますよ。
次に多いのは、助産所(助産院ともいいます)ですね。
助産所とは、助産師によって開業されている出産などをケアする施設です。
”おひさま”も助産所です。
助産所では妊娠初期から出産後まで健診を行い、妊産婦さんの健康状態を常に把握していますから、安全なお産ができます。
異常をみつけると正常になるよう指導はしますが、お医者さんの診療が必要な場合は、病院を紹介しています(助産所には医師がいません)。
また、保健所や市町村の健康課・保健センターでも助産師が働いています。
赤ちゃんが生まれると、保健所などに行く機会がよくあります。
母子手帳をもらいに行ったり、お子さんの予防接種に付き添ったり、乳幼児健診(3~4か月児健診、3歳児健診など)に付き添った時に対応してくださるのが助産師ですね。
新しく赤ちゃんが生まれると、市町村の助産師さんがそのお宅に訪ねてきて元気に過ごしているかどうか様子を見てくれます。
赤ちゃんの健康状態をチェックしたり、育児相談にのってくれたりもします。
出産を経験された女性にとっては、助産師はとても身近な存在ではないでしょうか?
他にも全国を飛び回って講演活動をしていたり、デバートなどに設けられた子育て支援コーナーで育児相談に乗っている助産師もいますよ。
お子さんやご自身の健康について気になる方、子育ての悩みを抱えている方は、身近にいる助産師に相談してみてはいかがですか?
間違われやすい職業
助産師は、医療や保健のお仕事の一部をおこなっているので、他の専門家とよく混同されることがあります。
間違われやすい専門家との違いを説明しますね。
看護師と助産師の違い
看護師と助産師の共通点は、両者とも看護師免許を持っていること。助産師は看護師でもあるので、両者は混同されやすいですね。
看護師と助産師の違いを一言で説明するなら、「助産行為」ができるかどうかということ。
助産行為ができる人が助産師、できない人が看護師。
助産行為とは、「出産を助けて赤ちゃんをとりあげる行為のこと」をいいます。
助産行為は、助産師免許を持つ助産師と医師だけができます。
助産師は看護師免許に加えて助産師免許を持っていますが、助産師免許を持っている看護師はかなり少ないのが実情です。
なお、男性は看護師になれますが、助産師にはなれません。
産婦人科医と助産師の違い
産婦人科の医師と助産師の共通点は、両者とも助産行為ができることです。
助産師は、妊婦さんの分娩(ぶんべん)が正常であるときは、自身の判断で助産介助ができますが、異常があるときは医師に任せなければなりません。
また、助産師が対応できるのは、健康状態が正常な範囲にある妊産婦・じょく婦・胎児・新生児に限られます。
健康状態に異常があれば、自身の判断で医療措置はできず医師の診療を求めなければならないのです。
こうしたことは、保助看法の第三十七条と第三十八条で定められています。
ですから、産婦人科医との違いは、助産師は異常がある妊産婦さんなどには職権の範囲を超えた医療処置や助産行為ができないことです。
なお、男性は産婦人科医になれますが、助産師にはなれません。
保健師と助産師の違い
保険師さんとの違いはどうでしょうか?
両者の共通点は、下記の2つです。
- 看護師免許を持っていること。
- 保健指導ができること。
違いは、お世話をするお客様が違うことです。
保健師は、地域住民・学生や教職員・会社で働く人など、さまざまな年代の男女を広くお世話します。
一方の助産師は、主に妊婦・じよく婦や新生児のお世話に限られます。
体や心の健康をケアする点では保険師も助産師も同じですが、お世話をするお客様の範囲が違いますね。
お世話の仕方が、保健師は広く浅く、助産師は狭く深くといったところがあると思います。
なお、男性は保健師になれますが、助産師にはなれません。
助産婦と助産師の違い
助産婦と助産師も紛らわしいですね。
でも、両者とも同じです。
保助看法の改定により、助産婦(じょさんふ)から助産師(じょさんし)に職名が変ったのです。
平成14年に「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」に改めらました。
これがきっかけで、「助産婦(じょさんふ)」から今の「助産師(じょさんし)」へと名称が改められたのです。
昔、助産婦だった人たちが、今は助産師と呼ばれているのです。
助産師になるには
助産師のお仕事に興味を持って、私もやってみたいという人もいるかも知れませんね?
助産師への道のりを簡単にお話ししますね。
助産師になるには、
まず、女性であること。
そして、看護師免許と助産師免許の2つの国家資格を持っていることが必要です。
助産師への道
ゼロから助産師を目指す場合、次のステップを踏むことで助産師になれます。-
Step1
大学・短大・専門学校などの看護学科に入学。
卒業すると看護師国家試験の受験資格を与えられる。 -
Step2
看護師国家試験を受験する。 -
Step3
合格すると看護師免許が与えられる。 -
Step4
助産師養成学校に入学。
1~2年間の教育課程を修了すると助産師国家試験の受験資格を与えられる。 -
Step5
助産師の国家試験を受験する。 -
Step6
合格すると助産師免許が与えられ晴れて助産師になることができる。
受験するのに年齢制限はありませんが、就職時に年齢制限を設けている職場はあります。
助産師になるまでは勉強が大変で、決して楽な道のりではありません。
しかし、その分だけ社会的意義が高く、やりがいのあるお仕事ですよ。
助産師に興味をいだく女子のみなさん!是非チャレンジしてくださいね!
分娩のとき陣痛で苦しむお母さんを介抱したり、赤ちゃんを取り上げるのに血を見たりして大変だなと思う人もいるでしょう。
でも、出産というとても大事な場面に寄り添わせていただいたり、命の誕生に立ち会えるとてもやりがいのあるお仕事です。
踏み込んだ深いお付き合いができるのです。
また、若い人とお話しする機会があって素直に感謝されたとき、一人の女性の人生を好転するお手伝いができたときの充実感は言葉では言い表せないものがあります。
本当に助産師になってよかったと思えます。